研究概要 |
本年度は本研究の最終年度にあたるため, 各研究分担者が各自のテーマに沿って, 時代・地域を設定して問題点を抽出し, 中国の政治史・制度史・文化史において少数民族の果たした役割を分析し, それを研究代表者に報告した. その概要は以下の通りである. まず, 本研究においては当初より古代中国における楚民族・楚文化の分析が予定されていたテーマであるが, これについては古賀登が, 近時中国雲夢睡虎地出土の戦国秦代竹簡の中に見える「日書」の解読を通して, 同竹簡が古代楚の占い書であり, そこに古代楚地方にいた民族の民間習俗が反映されている旨を分析した. 中国西方系の少数民族は, 北方系の民族と接触をくりかえし, 極めて複雑な歴史をたどったが, 今日では彼らは中国西北部に新彊ウイグル自治区を形成し, 13種の少数民族が5つの自治州と6つの自治県によって生活を営んでいる. これらの自治州・県と少数民族との関係, および民族変遷の歴史については, 長澤和俊が報告した. 次に, 少数民族と中国政治史との関係に目を向けると, まず福井重雅が, 漢代の代表的少数民族夜郎を取り上げ, 夜郎が漢に帰属した年代を分析し, 同時に漢代政治史上最も重要な問題の一つである董仲舒の対策の上呈年代の範囲をそれによって限定しようとした. また, 唐代は多数の少数民族が漢民族と接触をもった時代であるが, これら外民族と唐王朝との関係は朝貢とい行為によって保たれていた. そこで石見清裕は, 唐代における様々の朝貢規定関係の史料の整理を行なった. 研究成果報告書は, 以上の研究をもとに作成される.
|