研究概要 |
「文學の巨匠における刑法思想」という課題を追究するため、ゲーテ,シラー,シェークスピア,ドストエフスキーにかかわる文献、特にゲーテに関する文献を菟集し、「刑法成果報告」をまとめあげた。 本課題を追究する目的は、ただに同考學の世界に閉じこもることなく、哲學、文學等あらゆる分野の巨匠に「學ぶ」ことにより、固有の意味における「刑法思想編」を構築するという点に在る。すなわち、「刑罰理念」及び「刑導責任の本質」の「根元」に横わる「思想」を追究するという目的に立脚して、「広く且つ深く」思想家の「思想」を弁え、「刑法思想」の根元を明らかにするのが、本課題の究極のねらいである。そこで、先ず、固有の意味における「刑法思想論」構築の必要性につき、死刑存置編及び死刑廃止編を顧みることにより、又、「刑法における期待可能性思想を顧みることにより、「刑罰の理念」及び「刑導責任の本質」につき、特にカントの「思想」を追究することが不可欠であると編究し、このカント思想との関連において、とりわけゲーテの思想を追究する必要があると編じて、先ず、カントの思想における中核を弁えることとした。そして、カントが、超感性的世界における「理性的」人間に人間の核心を求めたのに対し、ゲーテは、有機的自然観に立脚し、又、「万有在神編」、「神」と人との合一に立脚した「一元編的」な「神」の思想に基づいて「人間」を捉えたという点を編述すると共に、更に、「畏敬」の念からゲーテの「道徳律」を導びきだしたということを明らかにした。そこで、このようなゲーテの「思想」に照らして「刑罰の理念」及び「刑導責任の本質」を顧みる時には、如何なる理論を樹立すべきであるかということを更に考究しなければならない。
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