研究概要 |
テルルおよびその化合物は液体状態において温度, 組成, 圧力等の諸条件によってその結合状態が著しく変化する. これに伴って電子物性, 構造および熱力学的性質に特異な振舞を示す. われわれはこれらの系の構造因子測定, 比熱および音波物性の温度スキャンと組成スキャンの実験を行い, これらがどのような関係にあるかを明らかにした. 即ち, Se-Te,IIIb-Te等の合金は温度の上昇と共に非金属状態から金属状態に漸次変化することに着目し, その系がショットキー型の比熱を示すことを実験的並びに理論的に証明した. また同じ遷移のモデルを用いることによりSe-Te系の構造因子の定量的解析に成功し, 非金属状態と金属状態のそれぞれにおける結合様式と原子構造の関係を明らかにした. また, IIIb-Te系の音速の組成並びに温度依存性に関する詳細なデータ, および吸収係数の組成並びに温度依存性の測定を行った. 特に音速のデータから求めた圧縮率の値は非金属状態から金属状態に遷移す際にローレンツ型曲線状の極大値を示す. これを説明するため現象論的熱力学理論を展開し, 圧縮率の増加量が非金属-金属状態の体積差と金属状態のモル分率の圧力による変化量との積に比例することを示した. また吸収係数の測定値とこれまでに知られているせん断粘性係数の値から体積粘性係数を〓出し, 温度の上昇と共に非金属-金属転移温度近摩でこの体積粘性係数に対するせん断粘性係数の比が極少値をもつことを示した. このように液体内である相から他の相に転移する過程は固体のそれと異なり高次の転移を示すことが判明した.
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