配分額 *注記 |
7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
1987年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1986年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1985年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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研究概要 |
超高真空蒸着法により種々の金属を組み合わせた多層(人工格子)を作成しその物性を調べた. MnとSbを積層すると強磁性化合物MnSbが生成され, Sb層とエピタキシャルに成長する. Mn層を1〓とするSbでサンドイッチした強磁性単原子Mn層が得られ, その磁化容易方向は膜面に垂直であることがわかった. これまで行ってきた磁性-非磁性人工格子の研究に加え, 磁性体どうしの組み合わせを検討するためにFe-Dy, Fe-Nd人工格子を作成しその性質を調べた. Fe層, RE層とも約20〓を境に非晶質から結晶相に転移する. 非晶質の場合は低温で垂直磁化が見られるがキューリー点は室温以下である. 結晶相の場合はキューリー点は非常に高くなるが磁化方向は面内である. しかし一部の試料では温度とともに垂直異方性が優勢となり, 面内から垂直へのスピン再配列現象が見られた. この原因は界面層におけるFeとRE原子の磁気結合によると考えられる. FeとMnは構造, 磁性とも複雑な系であるが放射線X線の異常分散効果を利用した測定が構造解析に有効であることを見出した. Fe層が薄い時は弱い強磁性を持つ非晶質相となり, 反強磁性Mn層を通じて結合し, 巨大ミクト磁性系と見なせることがわかった. 人工格子の超伝導性を調べるためにV-Ag, V-Siを組み合わせた. V-Agの場合, Ag層の近接効果で結合した超伝導系となり, 臨界磁場の温度依存性において次元クロスオーバー現象などが観測された. なおV層が10〓以下の時はAgとエピタキシャルに成長し準安定相が現れることが見出された. V-Siの場合界面効果でTcが上昇する予想もあったが実際にはV-Agの場合とほぼ同様にV層が薄くなるにつれてTcは低下する一方であることがわかった. 本研究により, 原子レベルで構造を制御した金属人工格子の作成は種々の組み合わせについて可能であり, 基礎的物性研究のモデル物質として興味深いものであることが明らかになった.
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