研究概要 |
本研究は海氷域における海洋熱流量を, 結氷に到る冷却期, 結氷後の海氷を通しての熱流量, 厳寒期に海氷域内に生じる開水面を通る熱などの夫々について調べ, その全体像を把握することを目標とした. そのために, 低温実内実験, サロマ湖海氷での現場実験観測, 数値モデル研究などを行った. 1.低温室内実験:低温実験室に設置した水槽を用いて, 静かに結氷させたり, 表面に風を吹かせて氷結晶(フラジルアイス)を吹き流し水面を持続させたりしながら熱の流れを推算した. 放熱量は1000Wm^<-2>程度に達し,海氷域内にこのような水面が維持されるポリニア海域では, 多量の熱を放出していることがわかった. 2.サロマ湖海氷での現場実験観測:昭和61, 62, 63年の三冬にわたって, サロマ湖(塩湖)の天然結氷を利用した現場実験観測を行った. 結氷板を熱流計に使って氷中熱流量を求め, 海氷下面での氷生成の潜熱を差引いて, 海から海氷に入り大気へと流れる海洋熱流量を得た. 湖面結氷とそれを切り取って作ったプールの薄氷とで海洋熱流量を求めると, 結氷初期の数+Wm^<-2>から氷厚増加と共に急激に減少する様子を知ることができた. また積雪の影響が大きいこともわかった. 3.結氷以前の海洋熱流量:海が冷えていく過程での海洋熱流量を鉛直一次元対流混合層モデルで考究した. 混合層水温が結氷温度になって氷が出来はじめる時期を衛星情報による海氷域季節変化と対比して, 南大洋では100〜200Wm^<-2>の熱流量がよく合うことがわかった. 4.氷上積雪の影響評価:サロマ湖での観測結果をもとに, 氷上積雪をモデル化して換算氷厚を考える取扱いを示した. 以上の結果をまとめて, 海氷域における海洋熱流量の総括的な図を作成し大気海氷海洋模型に役立つ知識を得た.
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