研究概要 |
パイロオウライト・ショグレナイト,コーリンガイトなどの鉄・マグネシウム含水炭酸塩鉱物の産状と、それらの化学組成,光学的性質,X線的性質,熱的性質との関連を検討して、これらの諸鉱物の起源について考察した。 パイロオウライト・ショグレナイトは産状を異にする5つに大別される。これらは化学組成上、主成分のほかにNiに富むものとMnにやや富むものとがあり、それぞれ異なる光学的,X線的,熱的諸性質を示す。本鉱物の最も特異な熱的性質は、110℃〜140℃で形成される中間脱水結晶相が250℃以下の温度域から室温へ急冷されても容易に復水し、初めの結晶構造へ復帰する脱水・復水の可逆過程を示すことである。この中間結晶相は、温度の上昇につれ構造を僅かずつ収縮させて行くのに対し、コーリンガイトは本鉱物に似た示差熱パターンを示すにも拘らず、脱水過程で2つの結晶相の存在が報告されており、さらに検討を要する。 光学的性質について、Mnにやや富むものは顕著な多色性と大きい屈折率をもつ、また、Niに富むものは多色性をほとんど示さず屈折率も小さい。しかし、屈折率には変動が認められ3つのグループに分け得る。コーリンガイトの自形結晶について光学的方位の決定をすることができた。 パイロオウライト・ショグレナイトの形成には、蛇紋岩中のブルーサイトが極めて重要な役割を果している。また、Niが蛇紋岩の起源物質である超苦鉄質岩中のカンラン石から主としてもたらされたことは十分期待されるので、本鉱物の形成に特異な化学組成の溶液を考える必要はなく、【CO_2】を含む深層地下水が貫入前の蛇紋岩体へ導入されるのみでよいと考えられる。そして、コーリンガイトは、ブルーサイトを含む蛇紋岩が破砕されながら貫入した後の非常に浅に部分で、恐らく地下水も関与して形成されたと考えられる。
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