研究概要 |
青色発光素子用材料として有望なZnSeの結晶成長を新しい低温成長法である有機金属分子線エピタキシー法(MOMBE法)を用いて検討した. この成長法は, 高真空中でMOCVD成長を行うもので, 従来問題となる気相中での原料ガスの付加反応を抑え, 清浄な雰囲気で成長ができるため, 高品質晶の成長が期待できる. しかし, これまでMOMBEによるZnSeの成長の報告はまだなく, 筆者らは成長系を含む成長条件の最適化から研究に着手し, 以下に示すような成果を得た. 1.成長系の最適化:MOMBEでは微量の原料ガスを精度よく供給する必要があるため, フルスケール1Sccmのマスフローコントローラを採用した. また, 質量分析計により反応槽内のガスの組成を観察可能にした. 2.クラッキング条件の最適化:MOMBEでは気相中での原料ガス同士の反応がほとんど無いと言ってよく, 原料は基板上でのみ加熱されるため, 十分分解しない可能性がある. そこで原料ガス(DMZn, H_2Se)を予め加熱分解するクラッキングセルを設け, 上述の質量分析により原料ガスをZnやSeの形で供給できるクラッキング条件を明らかにした. 3.成長機構の検討:原料ガスのクラッキングの有無に対し, 成長機構を検討したところ, クラッキングした場合はMBEとほぼ同様の成長過程が, また, クラッキングをしない場合, DMZnとH_2Seの基板上での反応過程が成長を律速していることを明らかにした. 4.膜質の検討:原料ガスをクラッキングすることにより, 従来のMOCVDではみられない平坦性の良い膜が得られ, 超格子膜形成に有望であることを示した. また, 光学的特性から, MOMBEで得られたZnSeが不純物欠陥等の少ない高品質結晶であることがわかり, 今後は不純物添加による物性制御を検討する予定である.
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