研究概要 |
本研究では, 有機重合膜, ダイヤモンド薄膜, 非晶質Si膜および窒化Si膜の製造に用いられる高周波プラズマの電界電離質量分析(FI-MS)を試みたものである. 得られた結果の概要は以下の通りである. イ)有機重合膜. 有機重合膜の堆積に重要な役割を果たすのは気相重合反応であり, 重合の速度は, 気相中に存在するラジカル種によって決まる. すなわち, C_2H_2 C_2H_3等, C/H比が1に近いラジカル種の存在化が大きい程, 重合速度が大きく, 逆に, メチル基, エチル基等単結合ラジカル種が大勢を占める場合は重合速度が低下する. 2)ダイヤモンド膜. メタン中に水素を添加することにより, CH_3ラジカルの生成が促進され, ダイヤモンド薄膜の合成に有利な状況が達成される. 3)非晶質Si薄膜. Ar希釈を行ったシランプラズマ中の主なるラジカルはSiH_3であり, SiHuの生成に至る気相重合反応はほとんどおこらない. したがって, 非晶質Si薄膜は主として, 表面反応によって形成されるものと考えられる. 4)窒化Si膜. シランとN_2ガスよりなるプラズマ中には, Si-N化合物はほとんど存在せず, 窒化Si膜の形成も, 基板上での表面反応によるものと考えられる. 以上の事実は, FI-MSがプラズマ中中性分子種の検出に有効な手段であることを示しており, 本研究のもつ技術的意義は極めて大きい. "質量分析法に基づく低温プラズマ制御システム開発の基礎を築く"という当初目標は十二分に達成することができた. 次年度以降, 本研究成果を踏まえた上で, 実用化の可能はプラズマ制御システムの開発を試みる計画である.
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