研究概要 |
この度の科学研究費用補助金により, 新たに高速引張試験機(島津Lab-5u)を得て, 広範囲の荷重速度にわたって精度良く実験が可能となり, 高荷重速度下でのFRPの変形と破壊を調査できた. 筆者らは平織ガラスクロス/エポキシ材を用いて破壊に及ぼすひずみ速度の影響を調査して, 高ひずみ速度ではき裂先端に発生する損傷領域が大きく広がり, これがき裂先端の応力集中を緩和することを実験的にもモデルシミュレーション解析からも見出している. まず, ガラス/エポキシの擬似一方向材, 0°/90°材, 平織りクロス材それぞれよりなる中央き裂試験片を用いて, ひずみ速度を10^<-4>〜1〔1/S〕と変化させて引張試験を行い, 構成の相違による変形および破壊様相を調査した. 擬似90°材はひずみ速度の影響がほとんど現われないが, 0°/90°材および平織クロス材は共にひずみ速度の影響を示した. 特にその影響は後者より前者が激しい. この理由は平滑材の各種方向の単軸引張試験結果からのモデルシミュレーション解析により予定できることを示した. 次に, それぞれ平織クロス強化材よりなるCFRP, KFRP, およびC/KハイブリッドFRPの四点曲げ試験を行い, ひずみ速度の影響を調査した. CFRPの変形はひずみ速度の影響は余りうけず負荷に対して線形であるが, KFRPのそれはひずみ速度の影響をうけて非線形である. これより単一複合材料の構成方程式を作り, C/Kハイブリッド材の変形を計算した結果と実験値は良い一致があったが, 破壊についてはハイブリッド効果が認められた. 曲げ破壊じん性評価については残された今後の問題で, 引き続いて研究遂行中である.
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