研究概要 |
加熱切削の熱源にプラズマを応用し、強靭,硬脆材の難削性改善を検討した。対象とした被削材は、高Mn鋼,チルド鋳鉄及びセラミックスである。 高Mn鋼,チルド鋳鉄の加熱切削では、いずれも切削抵抗は激減する。高Mn鋼の切削では、工具摩耗を最小にする加熱温度域が存在すること、また構成刃先,びびり振動抑制による仕上面改善の効果のあることが知られた。電算機シミュレーションの結果は、加熱切削時の切削抵抗,せん断角の減少,切りくず接触長さ増大等の実験結果を裏付け、また工具摩耗の因子である工具面垂直応力の抵下も示された。 セラミックスの加熱切削では、熱膨張率の大きいアルミナ,ジルコニアの酸化物系セラミックスについては熱応力による割れが発生しやすい。パイレックス,ムライト及び窒化珪素では、いずれも切削抵抗は高温域で激減し、特に背分力の低下が顕著である。切りくず生成は脆性破壊型から塑性変形型の流れに移行し、亀裂の少ない良好な仕上面が得られた。高温強度の最も高い窒化珪素についての各種工具による摩耗試験の結果は、ダイヤモンド工具使用の加熱切削(1050°C)の例で常温切削時の1/8の摩耗低減がみられた。 各種セラミックスについてBiotの係数を用いて求めた熱衝撃抵抗は、アルミナ,ジルコニア,炭化珪素及び窒化珪素の順に高く、また計算した材料内温度分布と単純化したモデルを仮定して計算した熱応力からも同様の耐熱応力破壊性のあることがわかった。局所的加熱ならびに急激な熱負荷により生ずる熱応力,熱衝撃及び材料の形状寸法の考慮によりセラミックスに対する加熱切削の有用性は、さらに増すものと思われる。 急加熱・急冷により生成される脆弱劣化層を切削する、難削性改善の試みでは、脆弱層は高送り条件で発生し、パイレックスを用いた実験で超硬工具による切削での摩耗は著しく減少した。
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