研究概要 |
本研究初年度(昭和60年度)は単結晶ダイヤモンドの研磨装置の設計・製作を行った. これによりダイヤモンドの研磨特性について実験した. 研磨特性については従来からも報告はあったが, 研磨力と研磨量は別個に計測されていた. 本研究では, これらを同時に計測するとともに, 研磨中のダイヤモンドの温度を測定しこれらとも関連づけることができた. また, ダイヤモンドは研磨中に揺動運動を加えると研磨特性が変わることもわかった. ついで, 次年度(昭和61年度)では研磨装置を用いて各種金属との摩擦についても実験的検討を加え摩擦実験でも本質的に研磨と同様の結果を得た. また, ダイヤモンドの個体間差を調べるため, 各種ダイヤモンドを研磨した. 最終年度(昭和62年度)では, 各種結晶方位をもつダイヤモンド切削工具を製作し, アルミニウム合金を切削した. これらの実験的検討から次の諸事実が判明した. 1.研磨実研では, (1)ダイヤモンドの研磨は揺動の有無により研磨特性が変化し, 揺動させると, させないときに比べ研磨中の接線力が低減し, 研磨温度が低下し研磨量を減少する. (2)研磨中の揺動による(1)の傾向は研磨が容易とされる3結晶方位(例えば{110}面の<100>方向)よりも, 困難とされる結晶方位(例えば{110}面の<100>方向)の方が顕著にあらわれる. (3)ダイヤモンドの押付応力を増大させると研磨温度は上昇するが研磨力比(接線力/押付力)は低減する. (4)ダイヤモンドを連続して長時間研磨すると, 非揺動研磨では研磨量は時間に比例して増大する. しかし, 揺動研磨では初期のうちは研磨が進むが, その後順次研磨が進まなくなる. (5)研磨力比の大小は研磨温度の高低とよく対応し, 研磨量とは逆の対応がある. (6)ダイヤモンドの研磨面粗さは, 非揺動研磨より揺動研磨の方が優れている. (7)ダイヤモンドの研磨特性はいずれの原石も同様であるが, その絶対値は個体により差がある.
|