研究概要 |
多気筒内燃機関の軸受にはすべり軸受が主として用いられているが, 大きく変動する複雑な荷重を受け, 過酷な条件にさらされている. 一方では省エネルギーの観点から摩擦損失は可能な限り小さくなければならない. 従来より変動荷重を受ける軸受についてその特性を知る上で不可欠である油膜圧力分布を測定している研究は非常に少なく, そのうち更に軸受摩擦も測定しているものはPatrickの研究一例に過ぎない. 本研究は変動荷重を受ける軸受の総合的な性能をより一層明らかにすることを目的とした基礎研究じある. 実験装置として, 軸受内油膜圧力分布, 軸受荷重, 軸心軌跡, 軸受給排油温度, 軸受摩擦トルク, 潤滑油流量といった軸受の基本的な特性は全て測定することができる動荷重軸受試験機を設計・制作した. 又, 実験データ処理はミニコンピュータによりオンラインで行なった. この実験装置により静荷重, 及び動荷重実験を行った結果, 軸受内油膜において全ての実験で負圧を観測した. 負圧の最大値は-0.35MPagであった. そこで, 潤滑油を微細な気泡を含むエマルジョンであると考えた気液二相流体潤滑理論により数値計算を行い, 負圧の発生機構の解明を行なうと共に, 油膜圧力分布, 軸受摩擦トルク, 潤滑油流量の測定値との比較を行なった. 得られた結論は, 1.負圧の発生の様子は実験条件(軸受荷重のかけ方)によって異なる. また変動荷重周波数の高い実験では油膜破断部に対応する平坦な圧力部分が絶対真空を示した. 2.気液二相流体理論によって実験で得られた負圧を説明できる. しかし摩擦トルクに関しては過大な予測を与え, この点に改善の余地がある. 3.軸受摩擦トルクの測定値は静荷重時には理論と定性的に一致するが, 動荷重実験では測定系の不備により信頼し得るデータを得られなかった. 4.潤滑油流量については理論と実験の一致は良好てあった.
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