研究概要 |
歯車変速機は, 小さな容積で大きな動力が伝達でき, また動力伝達効率も高いので広く用いられてきた. しかし, 歯車変速機は多くの場合に, 高い騒音が問題となっている. 本研究では, 減速機からの騒音を低くするため, 歯車とトラクションドライブの2段から構成されるハイブリッド形減速機を設計製作した. トラクションドライブ部は, 一個の駆動ローラと3個の被動ローラで構成され, 第1段目(高速部)に使用される. 歯車ドライブ部は, 前記の3個のローラ軸に軸付歯車として設けられている3個のピニオンで最終出力軸に取付けられた1個の歯車を駆動するようになっている. このハイブリッド形減速機の理論的減速比と動力伝達効率を計算する式を導き, 実験結果の解析に用いた. 全効率と運転騒音を調べるため, 2種類のハイブリッド形変速機を設計製作した. この減速機のトラクションドライブ部は, 2種類とも同じであるが, 歯車部は外歯車または内歯車を用いて2種類とした. また, 内歯車は, すぐばとはすばの2種類とした. 約2000rpmで10kwの動力を伝達するときの全効率は, 約90%であった. 内歯車を用いたハイブリッド形減速機では, 外歯車を用いた場合の変速機のケーシングを全く同じとして, 減速比を20から28へと増加させることができた. 動力伝達効率は, 約95%まで高くできた. トラクション油としては, 14種類の油について試験したが, 従来から歯車用潤滑油としてよく用いられている鉱油系油は, 全体的に高い全効率をもたらした. トラクションドライブ専用油として合成された油は, トラクション係数が大きいので, 最大負荷容量は増大するが, 軽負荷時の動力損失を大きくすることがわかった. 試作したハイブリッド形減速機は, 予想通り, ほとんど騒音を発生させなかった. 本研究で開発したハイブリッド形減速機は低騒音で動力伝達効率も同じ減速比のウオームギヤよりも高く, 増速用にも使用できる.
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