研究概要 |
本研究の主目的は、筆者が考案した相反回転方式の転がり疲れ試験機を用い(a)2枚のスラスト円板状試料と玉に対す転がり疲れ・摩耗寿命の分布状態を明らかにし(b)従来ワイブル確率紙上でしか推定できなかった3パラメータワイブル分布に関する解析ソフトを開発し(c)材料の転がり疲れや信頼性を評価する手法を確立することにある。研究成果は以下のように要約される。 (1)8ロット800セットの寿命試験結果はいずれも位置パラメータすなわち最小寿命を考慮した3パラメータワイブル分布に極めてよく適合する。 (2)3パラメータワイブル分布の解析には、マイコンディスプレイ上で(a)形状パラメータをm=10/9として寿命分布状態の代表2点から最小寿命γと尺度パラメータηを推定する2点推定法(b)最小2点乗法を用い標本標準偏差を最小にして【m!^】,【η!^】,【γ!^】を求める方法の2通りのソフトを開発した。 (3)その結果、寿命式中の指数値pならびに転がり疲れ強さすなわち基本動定格荷重Cの評価式は【L_(10)】-γ=【(C/Fa)^P】,C=【{η(ln1/(0.9))^(1/m)}^(1/P)】Fa(Fa=スラスト荷重)を用い、また任意の信頼度Sにおける寿命値Lに対してL=η【(ln1/S)^(1/m)】+γを用いるとはく離寿命の分布状態,信頼性を十分評価し得ることがわかった。 (4)本寿命試験機の性能は、現在市販されているユニスチールリグなどと比較し同一試験条件下においてさえ約4.5倍の加速試験を実施していることになるが、今後さらに大量の寿命データを収集するには試験機の自動化など改良の必要性を感じた。 (5)摩耗寿命に対しては本研究期間中有効な評価方法を見出せなかった。 なお、以上の研究成果は全てHRC61〜63.5の円板と9/【32^B】球で作製された軸受鋼材料製試料に対する寿命試験結果であり、セラミックス材料【Si_3】【N_4】製試料については現在やっと寿命試験を実施できる段階であるため、本研究期間内に報告できないのは大変残念である。
|