研究概要 |
吹き出しを伴うダクト内乱流は, 壁面の冷却や, 環状二相流の相変化の影響を評価するうえで, 有用な流れである. 本研究では, この流れの流動・熱伝達特性を調べるために, 数値解析や乱れ場の測定を3年にわたって行った. 数値解析では, 一様吹き出しを伴う多孔壁円管内乱流をとりあげ, 基礎方程式を差分近似して解き, 乱れ量の予測にk-ε2方程式モデルを用いる手法を開発した. 他者の測定結果との対比により, 吹き出し開始点直後の層流化傾向の定性的予測, および, より下流の領域における壁面摩擦係数, 圧力勾配などの予測に対して, 開発した手法が有効であることが判明した. 層流化傾向をより詳細に検討するために, 下壁から一様な吹き出しを行える水平2次元チャンネルを自作し, レーザドップラー流速計による2方向の乱れ量の系統的な測定を行い, 次の結論を得た. (1)吹き出し面の近傍では, 吹き出し開始点の前後でレイノルズせん断応力uvの絶対値および乱れ強さu'とv'が急減する形式の, 一時的な流れの層流化傾向が生じる. これは, 吹き出しの直接の影響によるものであり, 乱れの生成機構および再配分機構双方が変化する事にもとづく. (2)吹き出しのない上面の近傍では, uvの絶対値とv'が下流に向かって漸減する形式の層流下傾向が生じる. これは, 直接的に吹き出しによるものではなく, この領域に集中的に生じる流れの加速によるものであり, 主として乱れの再配分機構の変化によって生じる. 上で得られた速度変動信号に象限分け法を適用したところ, レイノルズせん断応力に大きく寄与するエジェクション現象が, 吹き出しにより相対的に弱まることが分かり, 層流化傾向を裏付けていることが判明した. 吹き出しを伴うダクト内乱流の特性がある程度明らかになったが, 層流化傾向の定量予測が可能な数値解析法の開発や, 下流の乱れ量の測定などは, 今後も検討を続ける予定である.
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