研究概要 |
五酸化タンタル(【Ta_2】【O_5】)は、酸化物の中で最も化学的な安定度が高く、そのために、古くから高安定な固体電解コンデンサなどに用いられているが、これらの【Ta_2】【O_5】薄膜はすべて非晶質であるために、本来の単結晶が持つ特性を通信素子に応用することは不可能であった。本研究では、【Ta_2】【O_5】の単結晶薄膜を作成する方法と、その諸特性の解明を目的に、薄膜を作成し、その結晶性、弾性表面波特性に関する研究を行い、以下の成果を得た。 1.直流二極スパッタリング方式および高周波スパッタリング方式におけるスパッタ条件を変えることによって(1)X軸が基板に垂直な配向性、(2)アモルファス、(3)多結晶性の三種類の膜を容易に作成できる。 2.配向性膜は点群"m"に属するβ-【Ta_2】【O_5】のX軸が基板に垂直に成長した一軸配向性膜であり、しかもこの膜は圧電性を有する。 3.配向性【Ta_2】【O_5】薄膜における弾性表面波において、電気機械結合係数は最大1.5%であり、従来から用いられているZnO薄膜の約1.5倍と大きな値である。 4.配向性【Ta_2】【O_5】薄膜は零温度係数を有し、溶融石英ガラスの場合、hk=1.78において二次係数は0.148ppm/【℃^2】、パイレックス基板の場合、hk=1.27で二次係数は0.052ppm/【℃^2】である。 5.(Al/Cr/Si【O_2】/石英ガラス)構造を用い、縦波を励起することによって、定数(【C_(11)】,【e_(11)】,【ε_(11)】,【ε_(22)】)の測定に成功し、弾性表面波伝搬特性(位相速度、電気機械結合係数)の理論値を得ることが可能になった。 以上のように、スパッタ法による単結晶薄膜の作成と圧電性の確認は本研究によって初めて明らかにされたものであり、今後さらに、化学的耐久性があり、温度特性の優れた弾性表面波材料の実現が可能になるものと思われる。
|