研究概要 |
電気機械結合係数が大きく、室温付近で遅延時間零温度係数を有する新しい表面波材料【L_(12)】【B_4】【O_7】(LBO)の研究により得られた成果は、 1.結晶は直径自動制御(ADC)されたRF加熱式チョクラルスキ法により育成された。LBOのように低融点で蒸気圧が高く、高粘性材料の結晶育成においては、融液内に溶け込んでいる吸収ガスは融液が結晶化する際に固液界面に放出され、界面近傍の液相ではこの吸収ガス量が過飽和となっており巨視的欠陥である気泡を形成する。これらを除去するには融液内の対流を自然対流から強制対流が支配的である状態にする必要がある。即ち種子結晶の高速回転により、結晶下の融液は強制対流によって外側に逃げるので、吸収ガスの過飽和な融液で形成される気泡は結晶中に混入されることはない。本研究に於ては最適結晶回転速度は約38rpmであった。又結晶系自動制御のアルゴリズムの改良により直径変動の少ない結晶が得られた。これにより従来1mm/hであった育成速度を1.7mm/hにまで高めることができた。 2.実側したLBOの基本材料定数を用いて理論的にバルク波及び表面波の零TCFあるいはTCDを有する結晶基板方位並びに伝搬方向を明らかにし、側定結果と比較検討した。その結果両者は良く一致している事を示した。バルク波振動子(YZW)-30゜,(YZW)-54゜,(YZW)-68゜付近においてそれぞれ厚み縦振動の基本モード,厚みすべり振動の基本モード,厚み縦及びすべり振動の3次モードの共振周波数零温度係数が得られることを明らかにした。 3.表面波デバイスとして零TCDを有する方位及び伝搬方向は(0゜,78゜,90゜),(0゜,90゜,78゜),(45゜,90゜,90゜)基板であり、【Ks^2】は0.8-1%である。この内(45゜,90゜,90゜)基板が表面波デバィスを作製する上で重要である事を共振周波数及びTCDのλμθ角度依存性から考察した。次に(45゜90゜90゜)の基板を用いたキャビティ型の表面波共振子を作製した。共振周波数の温度係数は殆ど零であり、共振子の機械的品質係数Qは3400と優れた特性を示した。
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