研究概要 |
建築物における壁体の一般的支持状態と考えられる, 単純支持と固定支持の中間的な支持状態を定量化し遮音特性を求める際のパラメータとして活用することを目的に, 昭和60〜61年度に計画・実施した二重露光法及び時間平均法によるホログラフィー実験から, ばね剛性パラメータが有効との結論を得た. また, 等分布曲げモーメントによるパラメータの簡略な推定方法についても可能性を検討した. また, ホログラフィー実験により複雑な周辺支持形態・空間的形態・材質を有する遮音壁体の振動性状の把握が可能だが, これを理論・数値的に解明し対応を図ることは研究上重要な課題であるため, 昭和60〜62年度を通じ, 有限要素法による解析手法の開発・整備並びに実験との比較検討を計画し実施した. これにより, 平板や曲板の個々の振動モード成分の挙動の追跡や遮音特性のスペクトル解析などミクロ的な遮音解析と, バンド周波数内のモード成分の統計的な挙動の把握やバンド周波数に関する実用的遮音特性といったマクロ的遮音解析の両者の提案を行うと同時に, 実験的に求められた遮音特性の理論的な解明を行った. さらに昭和61年度には, 実験的に得られたホログラフィー写真より音響エネルギーの放射性状を推定する手法の開発を行った. これはホログラフィー写真から, 板振動の変位を面的に求め放射インピーダンスを乗じ音響エネルギーを推定する手法を用いている. その妥当性に関し, 音響インテンシティの実験値との比較を行い, 周辺支持部を除きほぼ良好な結果が得られることが示された. さらに最終年度の62年度には, 以上のような遮音に関する詳細な検討結果の実用的な意義を実証すると共に, 必要音を残し不必要な雑音成分のみを除去するような壁体による音の制御の可能性を求め, パイロットスタディという位置づけにより明瞭度法を用いた音声情報の透過特性に関し検討を行っている.
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