研究概要 |
昭和60年度〜62年度にわたり大型鋼塊として製造が容易で偏析が少なく,かつ550〜600℃付近の長時間クリープ破断強度のすぐれた12クロム耐熱鋼を開発し,その特性について詳しい研究を行なった. すなわち,低N(0.035%)で製造を容易にし,G.E社のものよりMo量を多くし,長時間の高温強度を安定にした. さらに大型鋼塊のため偏析しやすいので,低Si(0.035%)にしてこれを防止した. 本年は12クロム耐熱鋼の600〜650℃における長時間クリープ破断強度におよぼすW量の影響について詳細な研究と検討を行なった. この結果,Moを無添加とし,Wを2.6%として0.12cー11.5Crー0.8Niー0.25Vー0.05Nbー0.055N鋼を溶製した. 650℃,10^5hのクリープ破断強度は約10〜12Kgf/mm^2の外挿値が得られ,G.E社のものに比べると同一温度で約2倍の高温強度を有し,かつ製造が容易な中圧タービンロータ材が得られた. 他方,本鋼の組織変化を詳しく調べたところ,W添加はMo添加より炭化物反応を遅らせる効果があることがわかった. すなわちW添加は析出強化よりも固溶体強化の寄与が大きいために,高温長時間側の強度を高める効果が増幅される. また炭化物反応について調べるとM_3C→M_<23>C_6→M.ナD26.ニC2Cであり,W添加はこの反応をできるだけ遅らせる効果が相乗して長時間クリープ破断強度を高めたものと考えられる. 以上,0.12Cー0.05Siー0.7Niー(2.3〜2.6)Wー0.25Vー0.05Nbー0.05N鋼において,1020℃焼入れ,720℃焼もどしを行なうことによって650℃における蒸気条件で使用できる画期的なタービンロータが得られることを指摘する.
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