研究概要 |
浸炭, 高周波及び窒化などの方法によって表面硬化した鋼の疲労特性(疲労限度, き裂発生強さ, き裂の発生及び進展, 停留き裂など)及び破壊様式に及ぼす表面硬化条件(表面層の硬さ, 有効硬化層深さ, 全硬化深さ, 芯部硬さ, 横断面の半径方向における硬さ勾配, 残留応力など)及び切欠き形状の影響を研究し, さらにこれら相互の関係について解析した. 1.疲労限度は表面硬化条件及び切欠き形状などの変化によって直接影響される他, 上記要因の変化によって破壊様式〔試験片の表面を起点とする破壊(S型破壊)か, 内部を起点とする破壊(f型破壊)〕が変わり, 破壊様式の変化によってもまた疲労限度が変わること及びf型破壊をするような硬化条件の場合はゆるい切欠きを設け横断面における負荷応力の分布状態を変えること及びさらにf型破壊からS型破壊に遷移させることによって疲労限度を上昇させることができる. この場合, 破壊様式がf型からS型に遷移する条件の場合に疲労限度が最高になる. 一方, S型破壊をするような硬化条件の場合は平滑材の場合に疲労限度が最も高く, 硬化深さ及び応力集中係数αの場合につれて低下する. しかし, あるαの値(約3)以上になると疲労限度はほぼ一定値になり, この範囲においては停留き裂が存在する. 2.f型破壊の場合は, 有効硬化層深さあるいは芯部硬さの増加に伴って疲労限度は上昇し, 破壊様式がf型からS型に遷移する条件の場合に最高値を示す. それ以上硬化深さ及び芯部硬さが増加すると疲労限度は低下する. 3.f型破壊の場合は表面の残留応力は疲労限度の上昇に寄与しないが, S型破壊の場合は寄与する. S型破壊の場合の疲労限度をδws, 表面硬さをHvs, 表面残留応力をδRとすると, δws=0.158・Hvs+δR-12.5, f型破壊の場合の疲労限度をδwi, 芯部硬さをHvi有効硬化層深さをXとすると δwi=0.158・Hvi・X/(1-X)
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