研究概要 |
我が国のように高度化された農業機械化体系のなかで, 省エネルギ・品質の観点から太陽熱穀物乾燥を確立するため, その基礎となる放射乾燥法が検討された. この乾燥法は, 集熱用穀物乾燥ハウスを利用して行なわれるので, その集熱性能の検討がとくに重要である. まず指標となるハウス集熱効率の測定方法として非定常効率を提案し, その実測結果を重回帰式でまとめた. 同時にこの効率表示式を用いて乾燥容量に適した集熱規模の算出方法を提示した. 放射乾燥数学モデルでは, 境界条件として集熱面, 外壁面, 内壁面への到達日射量の計算が必須である. その日射モデルを確立し, 適合性を実験で検討し十分実用的であることを示した. 放射乾燥法では, 乾燥の熱源が放射伝熱の形で与えられるため, 水分の除去が十分でなく乾燥速度も遅い. 効率を上げるには風が必要である. その付加方法として, 放射・送風方式(平行流, 斜行流), 放射・通風方式(放射重点・通風重点)を提案し, 室内基礎実験・乾燥ハウス利用実験を行い, 能率と品質に及ぼす影響を検討した. その結果, 斜行流方式, 通風重点方式が実用的に有効であることを示した. 上述の各方式についてシミュレーションを行うため数学モデルを構築した. とくに放射乾燥モデルでは, 熱伝導, 空気蓄熱といった現象を無視できないので, その取り扱い法, 境界条件の設定を明確に表示した. 一例として, 通風重点方式の数学モデルについて, 実測値と比較してその妥当性を証明し, このモデルを利用したシミュレーションより乾燥規模の設定や経済性の検討を試みた. この放射乾燥法の実際の応用例を対象に, 実情の調査, 経済性の検討を行った. この研究の基礎的実験における斜行流方式の結果から最適な送風・撹はん方法を, また通風重点方式からテンパリング乾燥機併用方法, を提案し乾燥効率の改善を図ると同時に経済的にも成立することを実証した.
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