研究概要 |
Wister系雌ラットに硫酸カドミウムの10ppm溶液を飲水として与え, 同時に0.2mgCd/週(0.2mg/w群), 0.4mgCd/週(0.4mg/w群), 0.6mgCd/週(0.6mg/w群)を皮下投与した. さらにトレッドミルを使用する運動負荷群と非運動負荷群に分け, 53週間観察した. 体重, 飼料摂取量, 飲水量, 尿量, 尿タンパク, 尿中Cd, ヘマトクリット, 血清生化学検査, 血圧, 心拍数, 自発運動量, 骨X線検査および腎・骨の組織学的検査を実施した. Cd量が増加すると, 体重増加率と飼料摂取量は低下したが, 飲水量と尿量は著しく増加した. 尿タンパクは, 0.6mg/w群がもっとも早く8〜10週より増加し, 同時に尿糖陽性となり腎障害を認めた. 次いで0.4mg/w群, 0.2mg/w群の順で尿タンパクの排泄増加が認められた. 運動負荷群の方が非負荷群より早期に尿異常所見が出現した. 血圧はいずれの群も徐々に上昇した. しかし, 対照群との間に差はなく, 運動負荷との関連もみられなかった. 自発運動量は, 非運動負荷群の方が運動負荷群より増加した. またCd投与群では対照群に比較し, 自発運動量は減少した. 全身骨のX線所見では, 0.6mg/w群では, 明らかに骨の菲薄化と骨梁の粗鬆化がみられた. 骨皮質幅を計測し, Cortical thickness indexを算出すると, 非運動負荷群では0.2mg/w,0.4mg/w,0.6mg/wの順で低下しており, Cd量が多くなるほど骨量は低下した. ヘマトクリット値は, 対照群に比較しCd投与群で低下がみられた. 0.4mg/w,0.6mg/w群では, 尿素窒素, クレアチニンの上昇がみられた. また, 血清カルシウムはCd投与群において低下がみられ, 運動負荷群のほうがより低値であった. 血清アルカリホスファターゼはCd投与群で上昇してした. 骨の〓木法による組織学的検索では, 0.6mg/w群においてオステオイドの増加がみられた. カドミウムのラットに及ぼす種々の生体影響は, 運動負荷を加えることにより, より増強された.
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