研究概要 |
本研究は, 昭和60年度以前から行っていた研究を継続的に発展させたものであるため, 60年度以前に行った研究も一部含めて, その概要をまとめる. BWRプラントでは, 観測信号と異常外乱の間に近似的に線型関係が成立することに着目し, 射影作用素を応用して, 多重発生した小さな異常外乱の種類や大きさを, プラントの計装信号を用いて同定する方法を提案した. この方法をさらに発展させ, 計装信号の一部を非線型特性と関係の深い別の計装信号を用いて非線型処理することにより, 非線型特性をもつPWRプラントの外乱同定に適用する方法を導出し, さらに, AFC運転を行っているプラントから得られるランダムな変動を含む計装信号を, AFC信号を用いて補正することにより, 外乱による変動分を分離して抽出する方法を導びいた. これによりAFC運転を行っているプラントの外乱同定も可能になることを示した. PWRの1次系配管の中小破断や, SG細管の破断を対象とし, 計装信号を用いて, 配管破断の場合は事故条件を与える破断口径, 破断場所をオンライン推定する方法, 細管破断の場合は破断流量の時間的変化を実時間推定する方法および, いずれの事故においてもSGの1次側から2次側への伝熱量の時間的変化を実時間推定する方法を提案した. このようにして得られた推定結果および, 安定系の作動条件などのプラント計装から直接的に得られる情報を外部入力として, 実時間でプラントの内部状態と追跡計算する実時間事故追跡シミュレータを開発した. また実時間推定器と, 事故追跡シミュレータを効果的に統合し, 有効な情報を提供するための, AIマネージャーシステムの構想を提案した. なお異常状態や事故状態にあるプラントの将来予測法の研究は現在進行中で, 未だ十分な成果を得ていない.
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