研究概要 |
当初の二つの目的(1)ピコ秒一マイクロ秒時間分解吸収分光法により反応中間種の吸収スペクトルを測定し, その間の動力学を決定すること, (2)中間体の時間分解共鳴ラマン錯乱スペクトルから中間体の構造を決定することであった. 第一の目的については, 我々の予備的な研究の段階で, Pchlide-650→(hν)→X_1→(1-2ns)→X_2→(35-250ns)→X_3(X-690)→(1-2μs)→Chlide-678→(12μs)→Chlaと考えていたが, 装置を改良し詳細に研究し直した結果, Pchlide-650→(hν)→Pchlide(S1)→(<50ps)→X-B→(1.7±0.2ns)→X-690→(180±20ns)→X-684→(1.9±0.5μs)→Chlide-678→(10.5±2.0μs)→Chlaであることがわかった. 各時定数が精確に求まった. 以前, X2(≡X-684)からX3(≡X-690)ができると考えられていたが, むしろX-690からX-684が生成することがわかった. しかもまたこれらは低温で中間体を安定にして定常光で測定したスペクトルと良い対応が得られた. 一方, 第二の目的は非常に残念ながら達成することができなかった. しかしながら当科研費を認めて頂いた副産物としてインコヒーレント光を用いたコヒーレントラマン錯乱(コヒーレントストークスラマン錯乱CSRS)により振動位相緩和を決定するという理論的及び実験的研究を行ない成功した. この研究と関連のあるインコヒーレント光を用いた高速緩和現象の研究を進展させ, その結果世界各国から6回以上招待講演を頼まれ, 招待論文3編の執筆を依頼された.
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