研究概要 |
研究代表者により提唱された"組織体溶液"の研究の一環として本研究は界面活性剤水溶液およびホストーゲスト系を主とする四級アンモニウム塩水溶液に関する熱力学的考察を行ったもので, 後者の研究がその大半を占める. 得られた主な結果を以下に述べる. 1.(n-C_4H_9)_4N^+や(i-C_5H_<11>)_4N^+イオンを対イオンとする種々の四級アンモニウム塩水溶液を冷却すると水分子を多くもった特異的な水和物(包接水和物)を生成する現象は水溶液中における溶質の溶存状態を知る上で重要の知見を与える事を確認し, 本研究では, 一連のアルカンスルホン酸塩, アミノ酸塩, ハロゲン置換カルボン酸塩等の包接水和物生成を確認し, その物性を検討した. また, これまで全く知られていないポリアクリル酸塩に対しても同様の水和物の生成を確認した(融点は(n-C_4H_9)_4N塩の場合11.2°C,(i-C_5H_<11>)_4N塩の場合19.5°C). 2.一連の四級アンモニウムポリアクリル酸塩水溶液の粘度や密度の温度変化, 濃度変化を測定し, 水溶液中において, (n-C_4H_9)_4N^+や(i-C_5H_<11>)_4N^+イオン周囲にはかなり発達したcage-like構造が形成されており, 上記の結果とよく対応した結論を得た. 3.一連のR_4NCIO_4,R_4NI,R_4NNO_3(R=CH_3-n-C_8H_<17>)等の水に対する溶解度を測定し, 一般にこれら四級アンモニウム塩の溶解性は, 極めて溶解度の大きい一群と, 溶解度がかなり低い一群, 稀薄溶液と塩濃厚溶液とが二相に分離する一群の三種に大別され, 溶解度を支配する主な因子はR_4N^+イオン周囲に形成される水のcage-like構造の形成の難易, この構造に与える対イオンの効果(主に体積効果)の二つが最も重要と結論され, 一連のR_4NXの水に対する溶解性を統一的に説明する事が可能になった. 4.その他, アルコールのインターカレイション等に関する研究も行われた.
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