研究概要 |
1.水に対する溶解度の非常に高い塩化リチウムは濃厚電解質水溶液の静的および動的性質を研究するのに適した電解質である. そこで濃厚塩化リチウム水溶液について, 各溶液成分の自己拡散係数測定, X線構造解析, 分子動力学法によるシュミレーションを行い, 濃厚塩化リチウム水溶液の構造および動的性質を総合的に検討した. 自己拡散係数の測定は, ストークス型隔膜セル法により, 7Li^+, ^<36>Cl^-, および^2Hを各々トレーサーとして, 18.5mol Kg^<-1>まで濃度を変えて測定した. 14mol kg^<-1>以下の濃度ではD_<Cl^->はD_<Li^+>のほぼ2倍であるが18.5mol kg^+ではD_<Li^+>とD_<Cl^->は同じ値を示し, 両イオンが挙動を共にしていることを示唆する. 18.5mol Kg^<-1>塩化リチウム水溶液(水iLiclのモル比が3:1)の分子動力学法によるシュミレーションをおこなった結果, 比較的うすい濃度領域におけるシュミレーションに用いられたイオン間ポテンシャルよりも, 溶融塩の構造解析に用いられたイオン間ポテンシャルを用いた方が実験結果(X線構造解析より得られた溶液構造, および自己拡散係数の実測値)との一致が良いことが見い出された. 2.濃厚電解質水溶液の自己拡散係数, 粘性係数, 導電率についてこれまでに報告されているデータを収集し, これらの動的性質間の関係を調べた. その結果, 塩化物イオンの自己拡散係数と粘性係数との間にD_<Cl^->/D^0_<Cl^->=η_0/ηの関係が, また非会合=1:1型電解質の導電率と粘性係数との間にλ/λ_0=Sη_0/ηの関係が成立することを見い出した. 3.濃厚塩化リチウム水溶液の過冷却状態の構造や動的性質を研究するために, 元差熱分析, NMRの測定を開始した.
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