研究概要 |
1.ベンゼン誘導体へのナイトレン付加反応を利用して1,4-ジヒドロピロロピロールの毋体骨格およびt-ブチル置換体を合成し、この新しい分子系でのアルキル置換,アシル置換反応および臭素化反応の手法を開発した。2.毋体化合物とその種々の誘導体を用してジヒドロピロロピロールの物理的化学的性質を系統的に検討し、NMRスペクトルを用いた解析とX線結晶解析からは、この分子系が平面10Π電子系を構築する典型的なヘテロ芳香族化合物であることを証明した。その電子構造に関してはHe(1)光電子スペクトル法によるイオン化電位の測定と分子軌道計算により言及し、この縮環ピロールの最高被占軌道は窒素原子の隣接位に大きな係数をもち7.27eVのイオン化電子位をもつことを明らかにした。この低いイオン化電位は現在までに知られている10Π系芳香族化合物のなかで最小のものである。また、酸化電位,塩基性度の測定や求電子置換反応性の比較などからもジヒドロピロロピロールが著しく大きな電子供与能をもつことが明らかにされた。 3.ジヒドロピロロピロールの電解酸化をおこない導電性の重合膜を得、その物理的、電気化学的また分光学的特性についてポリピロール膜やポリアセチレン系のものと比較検討した。 4.平面8Π電子系化合物として新規な1,4-ジアザペンタレン(ピロロピロール)をジヒドロピロロピロールの過酸化ニッケルによる脱水素反応により合成し、その結合交替の程度や常磁性環電流の大きさなど反芳香族性に関する特性を各種スペクトルデータにより明らかにし分子軌道論による取り扱いと併せて考察することができた。 5.ピロロピロールに関連した複素環化合物2,8-ジアザビシクロ〔3.2.1〕オクタジエンの化学的性質を明らかにし、ジヒドロピロロピロールと密接な関係にあることを示した。
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