研究概要 |
CnOn^<2->で表される2π芳香族化合物群の中でn=7の化合物は未知である. この研究ではC_7O_7H_2やC_7O_7^<2->を合成することを目的とし, 1)七員環へ酸素官能基の導入. 2)七員環酸素官能基の酸化. の二点を主に検討した. これらの点を解決する過程でa)加溶媒分解によるポリアセトキシ及びポリヒドロキシトロポンの合成, b)2-アセトキシトロポン類のアセトトロピー, c)官能基を持ったp-トロポキノンの合成と酸化能評価, d)陽極酸化によるトロポキノンアセタール類の合成と反応, に関して, 幾つか知見を得た. 以下詳述すると, a)では無水酢酸-無水トリフロロ酢酸-酢酸混合溶媒(ATA)中ハロおよびアルコキシトロポンを加熱すると, 好収率で対応するアセトキシトロポンが得られた. この方法でヘキサアセトキシトロポンが合成され, 鉱酸で容易に加水分解できた. b)では従来イオン性中間体を経由するといわれていたアセトトロピーが協奏機構の〔1,9〕シグマトロピーで進行することを明らかにした. 従ってヘキサアセトキシトロポンではアセチル基が七員環上を連続して移動するカスケード機構の七回対称〔1,9〕シグマトロピーという興味ある機構で進むことが判った. c)では新たに幾つかのp-トロポキノンを合成し, サイクリックポルタンメトリーで酸化還元電位を求め, 性質を調べた. d)ではトロポノイドの酸化に陽極酸化を初めて応用した. ジアルコキシトロポンから対応するトロポキノンビスアセタールを良好な収率で得ることができた. この他, トロポキノンビスアセタールの配座異性現象や光転位反応並びにトロポキノンの構造要素をもつ機能性物質の合成など少なからず興味ある結果が得られたと思われる. 今後はこれらの研究成果を基盤にすればC_7O_7^<2->の合成が実現されると信じる.
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