研究概要 |
不斉配位子を有するルテニウム錯体の合成と、それらを触媒に用いる配位圏内不斉遊離基反応の開発を行った。不斉配位子を有するルテニウム錯体は【Ru_2】【Cl_4】【〔(+)-DIOP〕_3】,【Ru_2】【Cl_4】【〔(-)-DIOP〕_3】,【Ru_2】【Cl_4】【〔(+)-BINAP〕_3】(【NEt_3】),【Ru_2】【Cl_4】【〔(+)-BINAP〕_3】(【NEt_3】)および【Ru_2】【Cl_4】【〔(-)-BPPM〕_3】(【NEt_3】)の5種を合成した。Ru【Cl_(2】(PPh_3)_3【を触媒に用いるとアレンスルホニルクロリドはオレフィ)】ンと錯体の配位圏内で遊離基反応し、高収率で1:1付加物を生成することは私の以前の研究で明らかにされている。そこで本研究ではこの付加反応の触媒に不斉配位子を有するルテニウム錯体を用いる不斉反応について検討した。 Ar【SO_2】CL+RCH=【CH_2】【(RUL^*)!→】【RC^〓】HCL【CH_2】【SO_2】Ar【Ru_2】【Cl_4】【〔(-)-BPPM〕_3】を触媒に用いたときは反応は全くおこらず原料が回収され、【Ru_2】【Cl_4】【〔BINAP〕_3】(【NEt_3】)を触媒に用いた場合は高い化学収率で1:1付加物が得られたが不斉はほとんど誘起されなかった。不斉配位子にDIOPを有するルテニウム錯体を触媒に用いると高収率で付加物が生成し、また明らかに不斉誘起がみられたが光学収率は〜30%にとどまり高い値は得られなかった。さらに種々の不斉配位子を有するルテニウム錯体を合成して反応条件を検討すれば光学収率の向上はある程度は期待できると思われるが、遊離基が錯体の配位圏内に拘束される力はあまり強くないと考えられ、飛躍的光学収率の向上は難しいと推察される。このように光学収率ら不斉還元反応などの他の不斉反応と比較して良い値を示さなかったが、配位圏内遊離基反応において不斉反応がおこることを初めて明らかにされたことで本研究の目的は達成された。【CH_3】【SO_2】Cl,C【Cl_3】【SO_2】Cl,C【Cl_4】とオレフィンとの配位圏内不斉遊離基反応についても研究を行い、不斉が誘起されることを見い出した。
|