研究概要 |
本研究で取り扱った試料は, 昭和59年10月のマリアナトラフおよび昭和61年3月および11月の沖縄トラフの海水および堆積物である. 試料の採取は両海域とも本学調査船「東海大学丸II丗」により行ない, 海水については栄養塩, 溶在酸素, 主要元素およびマンガン, 堆積物については, 14の化学成分および堆積物間隙水中の12の化学成分の分析を行った. また沖縄トラフの3月および11月の航海で採取した海水中のメタンの分析も行った. 3月は沖縄本島の北北西約70マイル沖で, 10月は石垣島の北東約60マイル沖で観測を行った. 結果について先ず海水中の主要元素について, 11月の沖縄トラフにおいて, Na, K, MgおよびCaの分析を行った. これら元素と塩分との比の鉛直分布は, 表層から底層まで一定な分布を示し, 海底直上でわずかに高い値を示した. 海水中のマンガンについては, マリアナトラフの鉛直分布は, 表層で高く以下減少し底層で再び高濃度を示した. 濃度範囲は0.71〜2.48nmol/kgであった. 3月の沖縄トラフの鉛直分布は中層の約700mから底層の1500mまで急激に増加する分布を示した. 濃度範囲は0.18〜3.64nmol/kgであった. 11月の沖縄トラフの鉛直分布は, 海底直上で約5nmol/kgの異常値を示した. マリアナトラフおよび3月の沖縄トラフの観測点は「ALVIN」および「しんかい200」により熱水噴出が確認されており明らかにマンガンの異常値は熱水活動によるといえる. 11月の沖縄トラフの位置についても熱水活動の存在が予想される. メタンについては, 濃度は30〜50nl/lの範囲にあり, 深度による変化はなかった. 堆積物については両海域ともFe-Mn-(Ni+Cu+Co)×10の三角ダイヤグラムから熱水性堆積物であることが示された. 11月の沖縄トラフで採取した堆積物中の間隙水の化学分析のうち全炭酸およびリン酸濃度の平均はそれぞれ4.06mM/lおよび9.29mM/lで海水中の値にくらべ高い値であった.
|