研究概要 |
球粒隕石の一種ではあるが、非常に特異な構成成分をもつ頑火輝石球粒隕石の成因を調べるために、主として希土類元素の分布を調べた。希土類元素の主なhost Mineralは球粒隕石では燐酸塩鉱物であり、珪酸塩鉱物中にも1部含まれる。ところが、頑火輝石球粒隕石には燐酸塩鉱物は存在しない。その代り種々の珍らしい硫化物鉱物が存在している。これら硫化物鉱物のうち、水溶性硫化物鉱物と共存しているらしいということまでは、最近やっとつきとめられてきた。しかし、必ずしも上記硫化物鉱物の組織内に希土類元素がすべてはいっているとは考え難い。そこで中性子放射化分析法により、希土類元素の各成分鉱物中の分析を行い、希土類元素が硫化物鉱物以外に頑火輝石が主としてくるフラクションにも10%程度(隕石によっては30%程度も)存在していることを確かめた。その結果やこれまでの既知事実から、頑火輝石球粒隕石は他の隕石よりはずっと太陽に近いところで(たとえば水星と金星の間)比較的最近まで宇宙塵の形で存在していたものが凝集してできたのではないかと推論するに至った。実質1年あまりの研究期間でこのような頑火輝石球粒隕石の生成過程が全く明らかになるわけのものではなく、更に深く、固化年代測定,宇宙線生成核種の測定などと共に、どうして酸素不足の状態がその生成の過程で存在したのか等追求する必要がある。これがひいては太陽系及び宇宙初期における化学種生成の源を知る上に重要な因子となると考えている。 なおこの研究の過程において、微量放射能測定の準備中に、本邦に新いん石が落下した。早速設備のチェック及研究法の予備的研究をかねてこの新いん石中に宇宙空間で宇宙線により生成した放射性核種の測定を行った。そして【^(54)Mn】,【^(22)Na】の生成量がいん石の大きさ,形,試料として用いた石のこの隕石母体中の場所により鋭敏に変化することを、1ケのいん石中で見出す事ができた。
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