研究概要 |
ホルムアミドをプロトンで照射した生成物にCO,【CO_2】,【CH_4】,【NH_3】,HCNがガス生成物に存在することが確認されたが、このG値を求めたところ12.2e【V】/分子の照射線量のもとで、【NH_3】(G=1.91),HCN(G=1.14)であった。又、固体生成物の化学収率はオキザミド(0.5%),尿素(1.41%),ビゥレット(0.82%)であった。微量成分中に確認されたプリン,アデニン,ヒポキサンチンについては、HPLCとマルチU【V】スペクトロメーターを組合せた分析系でその存在を確定し、生成量は2mlのホルムアミドを4μAで60分照射した時、ヒポキサンチン(2.9mg),プリン(1.5mg),アデニン(0.62mg)であった。しかし、グアニン,キサンチン,S-1・3・5トリアジン,ビゥレア,尿素,及びピリシジン塩基は確認されなかった。 次に生成したポリマーを濃塩酸で加水分解しアミノ酸分析器にて分析したところ、アスパラギン酸,セリン,グルタミン酸,グリシン,アラニン,β-アラニン,β-アミノイソ酪酸,γ-アミノ酪酸等の生体アミノ酸が得られた。以上のように、ホルムアミドのような単純な物質がプロトン(太陽風の中心的粒子)の照射によって生命を維持するのに必須なプリン,アデニン,ヒポキサンチンのような核酸塩基と、生体アミノ酸が同時に生成したことは生体物質の起源,生命の起源について大変興味深いことである。このようにサイクロトロン加速粒子を利用した放射線化学は、宇宙における有機化合物の化学進化に対するシュミレーション研究として意義深いと考える。 一方ホットアトムを利用して標識した人工血液である【^(18)F】-フルオロデカリンを【^(14)C】-デオキシグルコースで標識した赤血球と共に脳虚血にしたラットに投与し、ラジオオートグラフィーで調べたところ、【^(18)F】フルオロデカリンは、そのコロイド径が0.1μmと微少な由に虚血部にも浸透した。それゆえ虚血部位への酸素供給が可能であると示された。
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