研究概要 |
1,4,8,11-tetrathiacyclotetradecane(〔14〕aneS_4)および6,6,13,13-tetramethyl同族体(Me_4〔14〕aneS_4), 1,5,9,13-tetrathiacyclohexadecane(〔16〕aneS_4)および3,3,7,7,11,11,15,15-octamethyl同族体(Me_8〔16〕aneS_4)などクラウンチオエーテルの低原子価遷移金属錯体, RhL^+(L=R_4〔14〕aneS_4, R_8〔16〕aneS_4:R=H,Me), cis-およびtrans-Rucl_2L(L=R_4〔14〕aneS_4, R_8〔16〕aneS_4), およびtrans-MoX_2Me_8〔16〕aneS_4(X=cl,Br,N_2,CO,CH_2=CH_2,HC≡CH)を合成した. これら錯体の電気科学, スペクトル, X-線構造解析, および拡張ヒェッケルMO計算にもとづいてクラウンチオエーテルはPπ供与性配位子として中心金属に高い求核性を付与することを解明した. 事実RhL^+はCH_2cl_2を穏和な条件下酸化的付加しtrans-〔Rhcl(CH_2cl)L〕^+を与える. またtrans-Mo(N_2)_2Me_8〔16〕-aneS_4は常温常圧下PhXとの反応で配位窒素分子のアリール化が起り, trans-MoX(N_2Ph)L(X=cl,Br)を生成する. これらクラウンチオエーテルの反応性は配位子のringsize, conformation, および錯体の幾何構造に大きく影響される. 芳香族炭化水素中cis-Rucl_2R_4〔14〕aneS_4とAl_2Me_6との反応ではC(SP^2)-H結合を活性化しtrans-Rucl(Ar)R_4〔14〕aneS_4(Ar=Ph,tolyl)を与えるのに対して, trans-Rucl_2Me_4〔14〕aneS_4が生成する. 一方cis-Rucl_2Me_8〔16〕aneS_4からは上記条件下C(SP^2)-H結合の活性化は起こらずRucl(Me)Me_8〔16〕aneS_4が得られる. 同様なring size効果はNaBH_4との反応観測され, cis-Rucl_2〔14〕aneS_4からわ〔Ru_2H(cl)(U-H){Me_4〔14〕aneS_4}_2〕^+が生成する. またRhMe_4〔14〕aneS_4^+の求核性は環のconformationによって影響されCH_2cl_2の酸化的付加反応速度はup-up-down-down conformerにくらべてall up型にくらべて7倍速い. なお, trans-Mo(N_2)Me_8〔16〕aneS_4は硫黄補助配位子のみを有する窒素錯体の最初の例であり, ニトロゲナーゼ活性部位が硫黄配位子を含むことからその化学的モデルとして注目される.
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