研究概要 |
67種のアンチモン(III)化合物(うち結晶構造が既知のもの16種)の^<121>Sbメスバウアースペクトルを20Kで測定した. 得られたメスバウアーパラメーター(特に異性体シフト, δと四極子結合定数, e^2qQ)とアンチモン(III)原子周囲の配位構造との関係を調べた結果, 次の結論を得, 従ってアンチモン(III)化合物の立体化学を理解する上で重要な孤立電子対の軌道の性格を決めることができた. 1.窒素, 酸素配位錯体でSbO_3E(擬四面体型, Sb_2O_3)≧SbO_4E(擬三方両錐型;〔Sb_2(tart)_2〕^<4->)>SbO_6E(Eはアキシアル位, 擬五角両錐型, 〔Sb(OX)_3〕^<3->>SbX_6E(Eはエカトリアル位, 擬五角両錐型, 〔Sb(Hedta)〕の順にδ, e^2qQが減少する. 2.硫黄, 塩素配位錯体でSbS_3E(擬四面体型, 〔Sb(SR)_3〕)>SbS_4E(擬三方両錐型, KSbS_2)>SbS_6E型(擬単〓八面体型, 〔Sb(S_2COR)_3〕, 〔Sb{S_2P(OR)_2}_3〕〜SbS_6E(擬五角両錐型, 〔Sb(S_2Pph2)_3〕>Sbcl_6(正八面体型, M_3〔Sbcl_6〕)の順にδ, e^2qQが減少することが明らかになった. 孤立電子体のS軌道性はこの順に, 左から右に行くにつれ増大し, 逆にq軌道性はこの順に減少していると考えられる. 3.δとe2qQの間に相関が存在しδの増大と共にe2qQは増大している. 配位電子の種類により, 異なる直線上にのり, 同じδに対してe2qQは硫黄, 塩素配位の方が窒素, 酸化配位より小さい. さらに, 凍結溶液中のアンチモン(III)錯体の構造, アンチモン(III)錯体の熱分解反応や放射線分解反応および有機アンチモン(V)錯体の構造等の研究にも, ^<121>Sbメスバウアー分光法を応用し, 本法の有用性を示すことができた.
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