研究概要 |
水溶液中での拡散による、100℃以下の温度でのFe硫化物育成を試みた。また、この温度での安定結晶相を確かめるため、熟成法による育成も併用した。さらに、Fe硫化物生成に影響を与える、酸化剤としての溶存種についても検討した。1、拡散法 Fe源として1〜2mold【m^(-3)】のFe【Cl_2】あるいはFe【SO_4】溶液を、S源として2mold【m^(-3)】の【Na_2】S溶液を用い、それぞれ10ml三角フラスコに秤取し、150mlの1mold【m^(-3)】NaCl母液中に、60℃で約60時間静置した。【Fe^(2+)】および【S^(2-)】の拡散により、NaCl母液中にFe硫化物結晶の生成することを期待したが、結晶の種類,およびその生成する場所は、実験のrunごとに異なった。NaCl母液中に生成する場合は、pyriteおよびSが主体で、これにgreigiteを伴なうことがある。S源フラスコ中に生成する固相は、天然には見出されていないNaFe【S_2】結晶である。Fe源フラスコ中の場合は、magnetiteが生成した。これらの結晶相はすべて、溶液中酸素(【O_2】)の影響下の生成物である。2.熟成法 Fe源としてFe【Cl_2】・4【H_2】O,Fe【SO_4】・7【H_2】O,Fe【Cl_3】・6【H_2】Oあるいは【Fe_2】【(SO_4)_3】・9【H_2】Oの各固相を用い、この中の何れか一相、あるいは二相の混合物を、S源としての1mold【m^(-3)】の【Na_2】S溶液中に投入・混合し、70℃に115時間前後保持した。鉄源が【Fe^(2+)】の場合に生成する固相は極めて活性で、デシケータ中ポンプ除気後の開栓で発火燃焼し、その同定には至っていない。生成固相を、その母液と共に空気中放置するとゆるやかに酸化し、Fe【Cl_2】を用いた方ではNaFe【S_2】相が、Fe【SO_4】の方からはmackinawiteおよびlepidocrouteが生成する。【Fe^(3+)】を鉄源にした場合は、pyrite,greigite,Sが生成するが、pyrite/Sの量比はFe【Cl_3】を用いた場合の方が【Fe_2】【(SO_4)_3】の方より低い。3.酸化剤 Fe硫化鉱物生成に際し、【Fe^(9+)】(aq)および【O_2】(aq)は酸化剤として十分に機能することが認められたが、【SO(^(2-)_4)】(aq)は、実験温度領域でその機能は観察されなかった。
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