研究概要 |
1.岩石の主要元素の分析について、次の点で改良した。(1)Bernas(1968)のフッ化水素酸による密閉容器での岩石分解法を容易に溶液化するために改良した。(2)原子吸光法による主要元素の分析において、玄武岩の組成に類似の既知の溶液を作り、それと同濃度の各元素の標準液を既知の溶液と比較することにより、測定条件・検査線用標準液を決定し、多量の干渉抑制剤を用いない簡便な方法を確立した。 2.早月川上流域の立山川の片麻岩類の変成度,変成温度について、鉱物のEPMA分析の結果次のことが明らかになった。(1)変成度は角閃岩相からグラニュライト相の漸移帯に属する。(2)変成温度に関しては、一つの岩石から610゜〜650℃、もう一つの岩石からは710゜〜780℃を得た。これは、この地域の変成岩が初期に700℃以上の変成作用を受け、後に優白質花崗岩の貫入に伴うミグマタイト化作用より610℃〜650℃の複変成作用を受けた可能性を示す。 3.変成度は黒部川下流域の角閃岩相十字石・藍晶石帯から早月川上流立山川の角閃岩相-グラニュライト相の漸移帯へと増加している。この変成度の増加と共に岩石の化学組成の変化は泥質変成岩で顕著にみられた。即ち、Si【O_2】は顕著に減少し、【Na_2】O,【K_2】O,MgO,MnO,Ti【O_2】は増加し、そして【Al_2】【O_3】,Fe【O^*】,CaOはほとんど変化していないことが明らかになった。又黒部川下流域の泥質変成岩と立山川のものとは、【Al_2】【O_3】,Fe【O^*】の含有量が多く、ラテライト起源の泥質岩であると思われる。 4.立山川での石灰質,泥質片麻岩中の優白質花崗岩の化学組成は、各元素に対して広い組成範囲をもち、マトリックス片麻岩との反応関係を示すが、塩基性片麻岩に対しては反応関係を示さない。これからの片麻岩では、塩基性片麻岩より容易にinsituにミグマタイトが形成される可能性を示している。
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