研究概要 |
本研究では、中国地方に分布する代表的なロウ石鉱床について、その主要構成鉱物の1つである絹雲母鉱物の産状を調査し、さらにX線分析、化学分析、熱分析の実験を行なって絹雲母鉱物の鉱物学的特質を明かにすることを目的にした。得られた成果は以下の通りである。 1.絹雲母鉱物のX線的性質や層間化学組成の性質が鉱床と鉱床の産状によって著しく変化する。典型的なロウ石鉱床(岡山県三石地区八木鉱山)では、層間のカリウムが一部アンモニウムによって置換される化学組成上の特徴に加えてモンモリロナイトとの混合層鉱物を形成し、モンモリロナイトの割合は珪化帯,班入り陶石化帯,ロウ石化帯の変質帯に合わせて増加する傾向を示す。一方、高温型の山口県宇久鉱山では絹雲母の結晶度が極めて高く、アンモニウムによる置換もほとんど認められない。結晶学的な積層構造も前者が2【M_2】のポリタイプで特徴づけられるのに対して後者は2【M_1】型を示す。また、テレスコープ型ロウ石鉱床に属する広島県豊蝋鉱山の絹雲母鉱物には八木鉱山と宇久鉱山産試料の中間の性質が認められる。 2.ロウ石産絹雲母鉱物の諸性質の中では、窯業原料鉱物として熱的な性質が注目され、特に含アンモニウム雲母鉱物の加熱特性が明かにされた。通常のカリウム雲母鉱物では500-600℃間で構造水の単純な脱水反応が進行するだけであるが、層間にアンモニウムを含むと、400-500℃でアンモニアガスとなって離脱するために一時的に水素雲母が形成され、この水素雲母からは引き続き700-800℃の比較的高温で構造水の脱水がゆっくりと進行して1000℃のムライト生成につながる。この一連の熱反応は体積の著しい収縮を伴っており、含アンモニウム雲母鉱物の重要な加熱特性と考えられる。
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