研究概要 |
高温における放射伝熱、あるいは測温に関連し、高温工学の基礎的数値の1つである放射率は、その重要さにもかかわらず、測定が少く、今後その蓄積が計られなければならない。放射率は測定物の表面の性質、状態が著しい影響を及ぼすので、光学物性値と実際上の値との間に大きな差を生じることがしばしばである。そこで本研究では、光学物性という立場と実際の熱伝達という面を考え合わせ、測定条件を正確に記述しうる範囲において、乾式製練の具体的状態に類似した条件下での測定を試み、放射率を分光的に、波長および温度の関数として測定した。 本研究では、(1)まず測定装置の開発を行い、可視〜近赤外および赤外の分光放射率、ならびに全放射率の測定装置を完成させ、(2)溶融Al,Ag,Auおよび固体Ptについて分光放射率を、また、(3)Ptについて全放射率を測定して装置の適用性を吟味した。(4)現実の問題としてしばしば遭遇する半透明体との共存条件下での放射の問題を解析し、(5)半透明体の例として、【Na_2】【CO_3】融体と共存する黒鉛およびAgについて測定し、これらの結果により【Na_2】【CO_3】融体の透温スペクトルを得た。 一方、(6)実用上重要な、粉体の有効分光放射率を測定するための装置を開発し、(7)アルミナ,黒鉛などについて測定し、(8)気孔の存在が、バルクにおいて放射率の小さい物質については大きな影響をおよぼすが、(9)黒鉛のようにバルクでも放射率の大きなものは粉体となったときの影響は少く、(10)粉体ではその有効射率は1に近づき、物質間の差は少くなる。 今後、本装置を用い、実用上重要な系一鉄および鉄合金,酸化鉄含有スラグ,銅および銅合金,銅マットなど-の放射率を測定し、固/液相変化の影響,温度依存性,組成依存性などを調べる予定である。また、スラグ相などの透過率も測定してゆく予定である。
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