研究概要 |
有用な化合物の光学活性体の合成においては天然生物資源から導かれるキラルシントンの活用が有利である. 本研究では(A)光学活性生物資源の電解官能基変換による汎用性キラル合成中間体の合成とその応用, (B)生物生産されるペニシリン誘導体のセファロスポリン系物質への電解変換とその応用について研究を行っている. まず, (A)については主にテルペン, 糖類を原料に用いてこれを汎用性中間体に改変する際(1)オレフィンの選択的官能基変換に有用な電解セレン化-脱セレン化反応 (2)電解系で生じる酸(電解酸)を用いるエポキシドの転位反応 (3)四酸化ルテニウムをメディエイターに用いるアルコールの間接電解酸化反応(4)ハロゲンをメディエイターに用いるフラン環の酸化反応等を開発した. これらの新反応を用いて, デヒドロリナリルアセタートからホップの香気成分の一つであるカラハナエノンの合成, (+)-3-カレンから光学活性菊酸の合成等に成功した. さらにルテニウム化合物を電子担体とする間接電解法をグルコースアセトニドの酸化に適用し, 高収率で相当するウロース体を得ることにも成功した. ケトン体はマクロリド系抗生物質合成における鍵中間体に変換している. また, 生物資源として豊富に得られるフラン誘導体の骨格変換により工業原料として有用なジメトキシブテン酸の合成にも成功している. 一方, (B)のペニシリンーセファロスポリン変換においては, 新たに2相系を用いる電解エン型塩素化法を開発し, これにより, クロロアゼチジノン誘導体を選択的に作り, セファロスポリン骨格の実用的な製取法を開発することに成功した. また, 3-メチレンセファム誘導体の簡便な合成法も開発した.
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