研究概要 |
オレフィンやシリルエノールエーテル類にジブロモカルベンを付加させることにより容易に得られるgem-ジブロモシクロプロパン類に対し特異的環変換を行ない、高選択的な合成反応を開発した。 1.gem位への二官能基導入法の開発 gemジブロモシクロプロパン類のニッケルカルボニルによるカルボニル化反応において求核剤としてシリルアミンやシリルスルフィドを用いることができることが判明した。前者の系では中間体として考えられるニッケルエノラートに対し求電子剤が反応し、四成分結合に基づくシクロプロパンのgem位への選択的二官能基導入が可能となった。 2.開環カルボニル化法の開発 gem-ジブロモシクロプロパン類のα位にクロロ基やクロロメチル基(またはメシロキシメチル基)が存在する場合、ニッケルカルボニルによるカルボニル化反応では開環が伴い、β,γ-およびγ,δ-不飽和カルボン酸誘導体がそれぞれ得られた。β,γ-不飽和カルボン酸合成は抗生物質ピレノホリン合成の重要な反応として適用できることが明らかとなった。シリルアミンを求核剤として用いれば、中間体の不飽和カルボン酸誘導体のニッケルエノラートに対する求電子剤との結合形成が行えた。 3.環元的非共役化法の開発 シリルケテンアセタールにジブロモカルベンを付加させて得られるgem-ジブロモシクロプロパン類は単離されることなくα-ブロモ-α,β-不飽和カルボニル化合物へ開環するが、これをホスホン酸ジアルキル-トリエチルアミンで処理すればβ,γ-不飽和カルボニル化合物への還元的非共役化が起こった。本方法もピレノホリン合成に利用でき、2-メチルシクロヘキサノンからの新しい合成ルートが開発された。
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