研究概要 |
3年間にわたる研究成果と反省, 今後の展望について項目別に述べる. 1.高活性金属配位子の合成 界面活性剤の形成するミセル分子集合体に可溶化するいくつかの脂溶性配位子を合成した. これら配位子は金属イオン(Zn^<2+>やCu^<2+>)に配位するイミダゾール基と金属イオンに配位して活性化される水酸基触媒基を有している. なをイミダゾールと水酸基のほかにスルホン酸基を有し, それ自身アニオン界面活性剤としてミセルを形成する配位子の合成にも成功した. 2.触媒機構の解明と配位子水酸基の選択的活性化 正常と逆ミセル系の何れの場合も, 触媒反応は配位子水酸基への基質エステルからのアシル基転移によって進行する. 反応加速は金属イオンへの配位によって配位子水酸基のpKaが大きく低下し, 中性条件でも活性な求核アニオンが形成されることによる. またアシル化中間体からの脱アシル化も金属イオンに配位した水酸イオンによって加速される. またZn^<2+>とCu^<2+>イオンはそれぞれ四面体と正方平面配位構造をとり, その構造で配位した水酸基が選択的に活性化される. 3.逆ミセル系におけるエステル合成 逆ミセル系でも水が存在すると加水分解が優先したが, 内核溶媒を水からDMFに変えると, アシル化中間体から添加したアルコールへアシル基の転移が起り, エステル交換が起る. 4.ペプチド合成の可能性 目的とする合成化学的に有用なペプチド合成のためのミセル金属触媒系の開発には至らなかった. しかし上記逆ミセル系でのエステル交換はアルコールの代りにアミンを用いればアミドが得られることを示唆していて, 将来への明るい展望が得られた.
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