研究概要 |
2種類以上の基質を同時に流加する微生物培養の方式を多重流加培養法と名付け, その最適化の手法を目指して, 実験的並びに理論的研究を行った. 多重流加培養で流加する基質は, 2種類以上の化合物あるいは天然栄養源(コーンステープリカー, 脱脂大豆粉末, 酵母エキスなど)である. 前者例として, メチロトローフを用いたメタノールと酸素の同時供給によるセリンの高濃度生産を研究した. 微孔性テフロンチュービングセンサーと自動制御系とによるメタノールの自動流加と, 溶存酸素電極と自動制御系とによる酸素の自動供給とにより, 高いセリン生成を達成できた. 天然栄養源の自動流加は, それらを直接検出するセンサーがないため, 間接的指標を採用せざるを得ない. 間接的指標として, pHと廃ガス中のCO_2濃度が考えられる. 天然複合基質は各種炭素源や窒素源を含むので, 廃ガス中のCO_2濃度は基質律速のよい指標とはなり得ない場合が多く, pH変動の方がよい指標となる. Streptomyces laurentiiによるチオストレプトン生産は, このような例であり, pHが上昇するときにグルコースと複合基質とを供給する方法を用いることにより, 菌体濃度157g/Lおよびチオストレプトン濃度10.5g/Lを達成できた. 合成培地でかつ流加基質が油脂のような水不溶性基質の場合は, 廃ガス中のCO_2濃度が指標として有効であった. Pseudomonas aeruginosaによるリパーゼ生産において, 廃ガス中の炭素ガス濃度に比例してオリーブ油を自動流加することにより, 1000unit/mLという高い最終酵素濃度が得られた. 流加培養法によって高菌体濃度にすることが経済的に有効かどうかを, 原料コストとランニングコストの両面から考察した. 高菌体濃度培養は, 1.より多量の培地成分を消費する, 2.培養時間がより長時間となる, 3.培養上澄液量の割合が減少する, の3つの特色があるため, 必ずしも経済的とはならない場合もあることがわかった.
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