研究概要 |
土壌型を異にする40種の土壌から抽出, 精製した腐植酸について, 元素分析, 官能基分析(COOH, C=O, phe-OH, alc-OH), 光吸収分析, ^1H-NMR分析(芳香族, OCH_3, Lactone, α-, β-, γ-H)を行なった. 以上の特性値について因子分析を行なった結果, 腐植酸を特徴付けるには官能基や色よりも, まず側鎖や窒素成分に注目しなければならないことを明らかにした. 因子負荷量の高い特性値を用いて判断分析を行なった結果, 誤判別されたのは40例中1例だけであり, 腐植酸の分析から土壌を推定することが可能になった. 石炭化学で開発された統計的構造解析法に改良を加え腐植酸に適用した. 元素分析, 官能基分析, NHR分析の結果をもとに, 芳香族指数, 芳香環縮合度指数, 置換度指数, 脂肪族側鎖指数を計算した. 腐植化度が高まると, 縮合環数は2〜5環となり, 側鎖炭素数は2-1と短かくなった. 腐植酸の平均分子量を蒸気圧浸透圧法によって測定した. 底質土を除き, 腐植化度の低い腐植酸ほど数平均分子量は大きかった. 非常に低分子化した前駆物質が縮合して腐植化度の高い腐植酸が生成するものと思われる. 各腐植酸の表面張力を測定し, ゲルクロマトグラムと対応させた結果, 高分子画分の多い腐植酸など表面活性能は高く, 会合体を形成しやすいことが明らかになった. このことは分画腐植酸についても確かめられた. 腐植酸の植物生育促進効果を調べるため, 腐植酸を添加した春日井氏培養液で水稲幼植物を栽培した. 18日間栽培後, 茎葉を切断し, 溢泌液と葉の成分分析から養分吸収量を測定した結果, 腐植酸は水稲幼植物のMg吸収能を促進することが明らかになった. このことはイオン交換膜を用いたモデル実験でも確かめられた. 稲のMg吸収能の促進に最も効果の高いEntisol腐植酸の縮合度は低く, 脂肪族側鎖は比較的長く, 高分子部分に富み, 平均分子量も高く, 表面活性能は高い.
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