研究概要 |
1.魚介類および加工品のヒ素含量をICPで測定した。スルメイカ肝臓のヒ素含量は高く、しかも脂溶性ヒ素が半分以上であることを認めた。貝類では肉食性巻貝の含量が著しく高いことを再確認し、ボウシュウボラ中腸腺では340μg/gという異常に高い値を示す検体も見られた。二枚貝では、ハマグリの鰓だけに高濃度のヒ素を検出した。その他、これまでに分析例のないイソギンチャク類やアメフラシのヒ素含量も高かった。加工品では、焼きのりを除くと比較的低含量のものが多かった。特にバイ筋肉のヒ素含量は高いにもかかわらず、缶詰では非常に低濃度であることが注目された。 2.6種ヒ素化合物をHPLCで分離し、ICPで検出するという、HPLC-ICP分析法を確立した。すなわち、ヒ酸,亜ヒ酸およびメチルアルソン酸は0.02Mリン酸緩衝液(pH7.0)を溶媒系とする陰イオン交換体で、アルセノベタインおよびアルセノコリンは0.1Mピリジン-ギ酸緩衝液(pH3.1)を溶媒系とする陽イオン交換体で、ジメチルアルシン酸は両者で良好に分離できた。 3.HPLC-ICP法を用いて魚介類および加工品に含まれるヒ素化合物を検索し、スルメイカ,多くの貝類,ウメボシイソギンチャク,オオパンカイメン,クロイソカイメン,紅藻オオシコロおよびアジのくさやにアルセノベタインを検出した。その他、ボウシュウボラ中腸腺にアルセノコリン,ハマグリの鰓に強塩基性化合物(テトラメチルアルソニウム塩)を認めたし、サンゴイソギンチャクおよびアメフラシにも同じ強塩基性化合物が含まれていた。さらに、多くの魚介類に未知化合物の存在を確認した。 4.ハマグリの鰓の強塩基性ヒ素化合物を精製し、ドラゲンドルフ試薬陽性,【^1H】-NMRでは81.7に単一線のシグナルを,FAB-MSではm/z135,120,106にピークを与えることから、テトラメチルアルソニウム塩【(CH_3)_4】【AS^+】・【X^-】と同定した。
|