研究概要 |
本研究の目的は, 神経伝達系基本因子としてのNaチャンネルの分子構造と機能部位の関連を明らかにする一つのアプローチとして, 本チャンネルに特異的な毒物テトロドトキシンの誘導体を用いた光親和性標識法によってこの課題に迫ろうとするものであった. これは一つの意欲的な挑戦であった. それだけに, 研究の展開につれて, 自らの手で一つずつ解決が必要とされる問題点が浮きぼりにされてきた, 例えば, 光親和性標識によって目的とするタンパク質の分子量を探る研究では一般的試薬として汎用されているアリールアジド型試薬では, ラベル後の精製過程で, ラベル量の大幅な減少をもたらしたために, 最終的なラベル部位の同定にまでこぎつけられない, などである. この障害を克服すべく, 新たな光反応性基を含む2群3種のテトロドトキシン誘導体を合成し, チャンネル標品との結合能も親化合物テトロドトキシン同様であることを確かめた. これら化合物群の光化学反応によるチャンネルタンパクへのとりこみ率及び生成物の安定性等について総合的な比較検討の結果, ジアジリン基をもつ化合物はアリールアジド型試薬でみられた欠点もなく, 有望なものと結論され, 現在これを用した研究が進行中である. 結果的に当初設定した目標の到達には間に合わなかったが, 問題点の解決を通して得られた知見とその対策も立てられたので, 近い将来に結実が望みうる状況となってきている.
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