研究概要 |
アレルギー性諸疾患に対し用いられている天然薬物を文献検索により選び出し、入手不可能であったもの20種につき熱水抽出エキスを作成した。これらについて、抗I型アレルギー活性として、ラット受身皮慮アナフィラキシー(PCA)反応に対する抑制効果を検討した。100mg/kg(i.v.)で20%以上の抑制活性を示したものに、枳実,陳皮,防己,黄耆,厚朴,辛夷,石胡〓,Melalenca lencadendronがあり、後3者について活性成分の分離を試みた。分離に際しては、in vivoのPCA抑制活性と良い相関を示すin vitroにおけるラット腹腔肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制活性を指標とした。 辛夷(Magnolia salicifolia)からはクマリン類,フラボノイド,リグナン類が活性成分として得られ、このうちのマグノサリシンは新規ネオリグナンでありX線結晶解析により構造決定した。単離された化合物の活性は、単独ではさほど強いものではなく、エキスの活性は、これらの混合物としての効果と考えられた。石胡すい(Centipeda minima)からは、フラボノイドの他、新規化合物を含む2種のセスキテルペンラクトンを単離した。そのうちアピゲニンとアルニコライドCは、50mg/kg(p.o.)でin vivoのPCA反応を顕著に抑制することが示された。インドネシア伝統医学で繁用されるM.lencadendronからは、トリテルペノイド,スチルベン類が活性成分として単離された。このうちピセアタノールは本研究で単離された化合物中in vitroでは最も強い活性を示しその【IC-(50)】値は既存の薬剤を上回るものである。更にin vitroの試験法を用いて、クマリン類,リグナン類,スチルベン類について構造活性相関を検討した。本研究により得られた以上の成果は、伝統医学におけるこれら天然薬物の用法に対して科学的な裏付けを与えるのみならず、より有効かつ安全な臨床用抗アレルギー剤開発におけるリード化合物を提供するという点においても意義深いものと考えられる。
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