研究概要 |
ジフェニルリン酸アジド(DPPA)は、我々が開発した多目的有機合成反応剤である。このDPPAを用いる有機合成反応をキイステップとして、種々の生理活性物質の新規構築法を以下のように検討した。 1.ペプチド結合形成反応(N-アシル化) 近年強力な抗腫瘍活性を示す数種の環状ペプチドが、海洋産ホヤより単離され構造研究が行われている。我々はDPPAを用いるペプチド結合形成反応をキイステップとして、抗腫瘍性環状ペプチドドラスタチン3(推定構造),アンジアサイクラマイド,パテラマイドA,B,C,スリチアサイクラマイド,ユリサイラマイドの合成研究を行い、これに成功した。 2.炭素-炭素結合形成反応(C-アシル化) カルボン酸をDPPAで活性化し、活性メチレン化合物と反応させると、容易にC-アシル化反応がおこる。この反応をキイステップとして、レーダウノサミン,L-バンコサミン,D-リストサミンなどのアミノ糖類,ならびに鉄キレーターで、アンジオテンシン変換酵素阻害作用を有するムギネ酸の効率的合成法を確立することが出来た。 3.アミノ基導入反応(アミノ化) 芳香族のグリニアあるいはリチウム反応剤に、DPPAを反応させるとトリアゼン誘導体が出来る。これをハイドライド還元剤で処理すると、対応する一級アミンの得られることが判明した。この反応をキイステップとして、肺炎菌より単離され、アンスラマイシン系抗生物質の骨格を有するティリバリンを、完全に立体選択的に、かつ効率よく合成することに成功した。 上記で用いられた諸反応は、いずれも簡便に実施することが出来、また一般性の大きいものである。今後さらにこれらの反応を駆使して、種々の生理活性物質の新規構築を行いたい。
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