研究概要 |
1.マウスを実験動物として、ヘキソバルビタールにより誘導される睡眠時間の延長効果について、生薬および採集植物材料の計16種のスクリーニング試験を実施した。各生薬等のメタノールエキスのうち、比較的脂溶性の高い物質を含む分面(Fr1),脂溶性・水溶性を共に持つ物質を含む分画(Fr2),単に水溶性だけを持つ物質を含む分画(Fr3)に分離した後、各々について投与量2-5g/kg、p.o.で効力を検定した。この結果12種生薬時の1つ以上の分画に有効性が認められた。Fr1と2に有効性が見られることが多く、Fr3においては稀であった。 2.睡眠延長効果を示したソボク(蘇木、マメ科スホウの心材)のFr1に含まれる鎮静活性の研究をした。化学成分として、ブラジリン(【I】),ブラジレイン(【II】),サッパンカルコン(【III】)プロトサッパニンA(【IV】),B(【V】),C(【VI】),およびE-1(【VII】、未知成分)を単離した。【III】は新規カルコン誘導体であり、2′-メトキシ-3,4,4′-トリヒドロキシカルコンで表わされ、【I】および【II】の生合成上の前駆体と考えられる。【IV】-【VI】は天然物として新らしい分類に属するものであり、アルカリ熔融するとサッパニンを生ずる。それらの構造は7,8-ジヒドロ-3,10,11-トリヒドロキシ-6H-ジベンゾ〔b,d〕オキソシン-7-オン(【IV】),(7S)-7,8-ジヒドロ-3,7,10,11-テトラヒドロキシ-7(6H)-ジベンゾ〔b,d〕オキソシンメタノール(【V】),(7R)-7,8-ジヒドロ-3,7,10,11-テトラヒドロキシ-7(6H)-ジベンゾ〔b,d〕オキソシンカルバルデヒド(【VI】)である。【III】(投与量142mg/kg,i.p.)【IV】(43mg/kg,i.p.),【V】(157mg/kg,i.p.)および【VI】(150mg/kg,i.p.)はヘキソバルビタール(80mg/kg,i.p.)によるマウス対照群の睡眠時間(約30分)を、順に41,48,75,8%だけ延長させた。
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