研究概要 |
CU, ZN-スーパオキシドジスムターゼ(CU, ZN-SOD)の立体構造と機能や生理作用の関係を知るために, ホウレンウソよりCU, ZN-SODを抽出・精製し, その全アミノ酸配列を決定するとともに, X線結晶解析によりその立体構造をも明らかにした. 一次構造の決定は, ホウレンソウCU, ZN-SODのnative酵素及びアセチル化後のBrCN分解物を直接に, また, 過ギ酸酸化後リジルエンドペプチダーゼあるいはV8プロテアーゼによる消化を行ない, 逆相HPLCにより分離した各ペプチド断片を, それぞれ気相シークエンサーで解析することによって行なった. その結果, ホウレンソウSODは154残基のアミノ酸をもつサブユニット2つにから構成されており, 一次構造既知の他の7種のCU, ZN-SODと53〜57%の相同性を示した. これら2つのサブユニットは, 2回軸によって関係づけられる. ホウレンソウCU, ZN-SODのX線結晶解析は2A分解能で多量同型置換法で行なった. その結果, ホウレンソウSODは非結晶学的2回軸によって関係づけられる等価なサブユニット(dimer)からなり, サブユニット間はC末端の数残基と100pの1つで接触していることがわかった. また, ホウレンソウCU, ZN-SODの基本的な構造は, 8本の逆平行β鎖よりなるβバレルと3つのループからなり, 分子表面に活性中心であるCu^<2+>を, やや内部にZn^<2+>を含んでいる. Cu^<2+>とZn^<2+>との距離は6.1Aで両金属イオンはHisのイミダゾール環を介して結合している. 今回解析したホウレンソウSODと立体構造既知の牛のSODとの構造比較から構造と機能の関係をある程度知ることができた. 現在, SODは種々の分野において注目されている. 抗炎症剤として開発されている一方, 老化の主たる原因として考えられている酸素圧下での生物の生活とのかかわりあいについての研究も進んでいる. 今後, さらに, SODを通じてこの方面の研究に進めて行きたい.
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