研究概要 |
生化学研究において陰イオン性界面活性である, ドデシル硫酸ナトリウムが広範に使用されている. 我々はSDSの周辺の類縁体が持つ特性に注目しそこに新たな可能性を見いだす一連の研究を企画した. 着目したものの一般構造式は:n-C_<12>H_<25>(OCH_2CH_2)mSO^-_3X^+. その結果次の事を明らかにすることが出来た. (1)m=O, X=リチウム, トリス, トリエタノールアミンあるいはトリイソプロパノールアミンの場合について検討したところ, リチウムはSDSに優る強力な界面活性剤として働き, 後の3種は表記の順序でより穏やかな界面活性剤として働く. (2)このような一連の界面活性剤の選択使用によって, 階層構造を有する蛋白質分子集合体の構成を解析する新手法を提案できた. 適用例としてホウレン草のチラコイド膜蛋白質の分子構築解析を提示した. (3)2%のトリス塩を用いることにより, ラットのコラーゲン分子の可溶化そしてクロマトグラフィーによって, それを高次の架橋によって生成する集合体から変性を起こさせずに分離する事に成功した. これは加齢に伴う架橋の形成の解析に有用である. (4)m=2〜8の類縁体を検討した結果, mが6以上のものと水溶性蛋白質に対して親和性を欠いた. それらは, 非イオン性界面活性剤と同様に膜蛋白質に対して高い親和性を示し, 大量の負電荷を導入する. 従って, これらの存在下において, 電気泳動を実施すると, 生体膜蛋白質を変性させる事なく高率的に分離・分析出来る. (5)上記の界面活性剤に類似し, 多量に得易い汎溶品としてアルキル基の鎖長そしてナキシエチレン重合度にそれぞれ13そして8を中心に分布があるものが実用品として有用なことを示した. 3年間の成果は, "SDS類縁体の生化学領域における活用"と題した総説にまとめ, 油化学会誌に寄稿した.
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